現代京都価値判定 〜新たな京都価値創造への道程〜
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■ 「問題物件」とは ■
京都における「問題物件」は大きく二つに分類できる。一つは京都とは無関係に、物件そのものが持つ一般的な困った物理的特性(例えば巨大マンションが周辺に大きな日陰領域を生み出すなど)や気分的に困った機能(葬祭場が市街地に立地する場合、周囲にあたえる無気味な印象など)が「問題」であるという物件である。もう一つは物件そのものの特質とはそれほど関係なく「京都という幻想」に浸っている人のみにとって「問題」と感じる(例えば都市ホテルとしては至極平凡な京都ホテルが「問題」となるような事態)物件である。本特集では、前者を「純粋問題物件」、後者を「京都問題物件」と呼ぶことにし、まずは「京都」特産品である「京都問題物件」の価値判定が孕む問題を中心に述べ、最後に両者の価値判定が、京都に対して如何なる可能性を示唆しうるのかについても触れたい。
■ 「京都幻想」 ■
「京都問題物件」は「京都幻想」の賜物であるがゆえに「京都問題物件」を語ることは「京都幻想」が何によって成立するのかを語ることへと通じる。その意味で「京都問題物件」の出現は、曖昧な「京都幻想」が何であるのかの正体を掴む絶好の機会となる。しかしながら、奇妙なことに「京都問題物件」の旬は非常に短く、それは物件建設が告知されてから建設直後までで、その後は何故だか目の前を通っても気がつかないほど馴染んじゃう物件がほとんどなのである。こうなるといったいその物件の何が「問題」だったのか全然わからないのであり、そこで危機を迎えるはずであった「京都幻想」は、行方をくらましてしまう。
しかしながら、「京都幻想」霧散のあと残されたのは単なる普通の物件たちであるとはいえ、いま我々に残されたのはこれらの物件しかないのであるから、それを放置せず、丹念にその価値判定を行いたい。霧散したとはいえ、彼等の出現によって「京都幻想」が表出したのであるから、彼等への価値判断を通して「京都幻想」の正体を掴む糸口が見えるかもしれない。我々はその可能性にかけたい。そのためには、いま話題沸騰しているものだけではなく、さまざまな状況にある「京都問題物件」をとりあげ、その瞬間熱狂に徒にまどわされない必要があろう。
■ 「京都問題物件」 ■
というわけで、我々は以下のような状態の物件を用意した。ひとつは「話題沸騰直前期」(建設作業前、例えば和風迎賓館)であり、次に「話題沸騰期」(建設中〜竣工前後、例えば有名建築家設計による中京区十一階建マンション)そして「沸騰後蒸発しかけ期」(竣工後五年前後、例えば京都駅ビル)、最後に「蒸発後、残り香すらなし期」(竣工したのはいつだっけというぐらい、例えば京都タワー)である。いろんな状態の彼等の価値判断をいかに行い、いかに「京都幻想」の正体を掴むのか。もし「京都幻想」の正体が掴めたなら、それは現代京都の正確な価値判定を行ううえで強力な武器となろう。
■ 「純粋問題物件」 ■
本特集後半『寒風鼎談』では物理的、機能的特質自体が「問題」な京都市街辺境に棲息する巨大「純粋問題物件」を発掘し、彼等が形成する、ある種超越性を帯びた風景に身をおき、その価値判定と可能性を問う。これは本特集が目論む現代京都価値判定という枠を越えて、通常京都から捨象される辺境に佇む彼等を起点に、京都が単なる(ともすれば商業的な)「瞬間幻想」漂う都市ではなく、深度に満ちた風景が展開する都市へと復権する可能性を模索しようというかなり強引な試みである。これらの試みが我々の目論み通りに実を結ぶかどうかに疑問があるのは否めないが、我々が「問題物件」価値判定を通して「京都幻想」の正体を掴み、現代京都のまやかしでない価値判定をおこない、その果てに新たに創造すべき京都価値を模索したいと切に願っているのはまぎれもない事実であり、それが京都にとって何らかの可能性を秘めた種子を蒔きうるものだと信じている。
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